【医療機関のBCP対策にも】衛星回線インターネット「Starlink(スターリンク)」。「災害医療」「遠隔医療」の現場に安定したネットインフラを
この記事のポイント
- 医療現場において衛星回線インターネットの導入が進んでいる
- とくに「災害医療」「遠隔医療」の現場には安定した通信環境が不可欠
- 「Starlink」は病院が備えるべきBCP対策としても有効
ビジネスのみならず、さまざまな社会活動などネットワーク環境が基盤となる現代において、場所や時間、環境の変化などに影響を受けることなく、あらゆる状況下で通信手段を確保することが必要不可欠となっています。
そんななか、新たな通信手法として注目度が高まっているのが衛星回線によるインターネット通信です。従来のインターネット通信では、ケーブルが敷設された場所など利用範囲が限られていますが、衛星を使った通信の場合、宇宙に浮かぶ人工衛星と通信を行うため、ケーブルを敷くことが困難な海上や山間部、へき地や離島といった極地でも通信が可能に。
この優位性を活かし、近年は山小屋や山間部での音楽フェス、災害やテロ攻撃に直面した際の企業BCP(事業継続計画)といったさまざまなシーンで活用の場が広がっています。
なかでもとくに、衛星回線によるインターネットの効力を発揮するのが医療現場です。衛星回線を利用することで光回線未開通地域でも通信が可能なため、長距離に及ぶケーブルなど大規模な設備の敷設が難しい、へき地や離島における遠隔医療でも活躍。さらに地震や津波、台風発生時の災害現場においては、地上回線が断絶した状況下でも、情報の遮断などが発生することを回避できます。
実際に2024年1月に発生した能登半島地震の際にも、多くの地域でネットワークインフラが途絶える中、衛星回線のアンテナにより、インターネット環境の早期復旧を実現しました。
そこで今回は、医療機関向けの衛星ブロードバンドインターネット「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を紹介します。
目次
- 医療に衛星回線インターネットの導入を。「災害医療」「遠隔医療」の現場には安定した通信環境が不可欠
- 衛星回線インターネットは病院のBCP対策としても活用可能!ケーブル断線やキャリア障害など、あらゆる通信リスクを回避
- 衛星回線インターネットに関する「よくある質問」を紹介。災害拠点病院でなくても衛星回線インターネットは有効です!
- 衛星電話は設置済みだが、衛星回線インターネットまで必要か?
- 衛星電話は屋上や駐車場といった屋外のみでしか通話ができず、不便な印象があるが衛星回線インターネットの使い勝手は?
- 災害拠点病院でなくても、衛星回線インターネットは必要か?
- 市街地に立地している病院でも衛星回線インターネットは必要なのか
- 医療現場の通信インフラを守る衛星回線インターネット「Starlink Business(スターリンクビジネス)」
- 衛星回線インターネット「Starlink Business」のご相談、導入サポートはctcにお任せください!
医療に衛星回線インターネットの導入を。「災害医療」「遠隔医療」の現場には安定した通信環境が不可欠
あらゆる情報共有におけるデジタル化が進むなか、「災害医療」「遠隔医療」における安定した通信環境の確保は喫緊の課題です。厚生労働省が提唱する「災害時における医療体制の充実強化について(医政発0321第2号)」の別紙「災害拠点病院指定要件」においても、災害拠点指定病院は「衛星電話を保有し、衛星回線インターネットが利用できる環境を整備すること」と明記されています。これにより、災害拠点指定病院は衛星回線の敷設が必須とされています。
また、災害拠点病院に指定されていない医療機関においても、患者の受け入れや送り出しの際に、災害拠点病院と情報共有をし、連携を強化する必要があるため、災害時に連携できる体制を整えることが求められます。
厚生労働省の提唱を受け、衛星回線インターネットの導入を実践している災害拠点病院はもちろんのこと、「災害発生時のリスク対応」「へき地、離島といった遠隔地の通信インフラ」「医療情報システムのBCP対策」などの観点を踏まえれば、衛星回線インターネットは、今後ますますその必要性が高まっていくと予想されます。
別紙「災害拠点病院指定要件」より抜粋
▼出典:厚生労働省/災害拠点病院指定要件の一部改正について
地震や津波・台風発生時の災害医療
阪神・淡路大震災、東日本大震災、能登半島地震をはじめ、日本は古来から、地震や津波、火山、台風、豪雨などあらゆる自然災害に直面し、甚大なる被災を繰り返してきました。
ひとたび大きな自然災害が発生した時、一刻の猶予も許されない被災地での医療活動に欠かすことができないのが、通信環境です。被害を受けた地域の医療機関との情報連携、被災地に派遣されている医療チームとの情報共有など、通信機能を確保することは、災害医療における最重要課題です。
被災地のリアルな情報や診療データのやりとり、拠点間の情報伝達を実現するためには、高速かつ大容量な通信が必要であり、それを可能にするのが衛星回線です。
衛星回線インターネットであれば、地震や倒木によるケーブルの破損など物理的な影響を受けることがなく、地上回線とは異なる周波数を利用しているため、地上回線が輻輳(ふくそう)した場合にも障害を受ける可能性は極めて低くなります。
そのため、ネットワークの冗長化が必須条件である医療現場において、平常時には地上回線を利用している場合でも、バックアップ回線として役立つことが期待されます。
へき地や離島における遠隔医療
衛星回線によるインターネット環境が効力を発揮するシーンは、災害時だけではありません。通信が困難なへき地や離島においては、災害時の緊急通信手段の確保はもとより、平時の医療においても通信環境の整備が急務となっています。
これまで通信インフラを整えることが物理的に困難だった離島をはじめ、大規模な敷設工事が必要なことから、一般キャリアでは導入コストの面で通信インフラが実現していなかったへき地なども少なくありません。こうした地域では基地局を介したWi-Fiルーターなどを利用するものの、安定的な通信状況を得ることが困難でした。
しかし、衛星回線インターネットであれば、無線で通信を行うため、長距離のケーブルを用意する必要がなく、大規模な設備敷設工事なども不要。低コストで安定した通信インフラを実現できることから、高精細な画像や動画といった大量のデータのやりとりや、リアルタイムなコミュニケーションが可能に。オンラインによる遠隔診療が実現しやすくなるほか、電子カルテの閲覧による医療情報の共有、遠隔での画像診断などの仕組みを構築することも容易になります。
高齢化社会が進む日本において、地域間の医療格差軽減の観点からも、衛星回線インターネットへの注目度が高まっているのです。
衛星回線インターネットは病院のBCP対策としても活用可能!ケーブル断線やキャリア障害など、あらゆる通信リスクを回避
通信環境の確保が求められるケースは、災害時のみとは限りません。ケーブルの断線や通信キャリアの障害により、通信ができない事態が発生することも考えられます。とくに医療機関にとってBCP(事業継続計画)は、緊急事態に備えるための必須条件です。
厚生労働省が策定した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」にも、BCP対策として通常時に対応すべき例として、「冗長化と切換え対応」が記載されています。
そこで効力を発揮するのが、衛星回線インターネットです。例えば主となるネットワーク環境として光回線を使っている場合、まったく異なる回線である衛星回線を回線の冗長化(バックアップ回線)として選択することにより、非常に強固なBCP対策を実現できます。
また、前述のガイドラインに「通常時に整備していたBCPが非常時において迅速かつ的確に実施できるよう、通常時から定期的に訓練・演習を実施」と記載されている点にも注意が必要です。
訓練、演習を行う際には、通常業務への影響が懸念材料に。通常時とは異なる衛星回線インターネットを使用することで、訓練実施時における業務影響を軽減できるというメリットがあり、ガイドラインの要件として求められている定期的な訓練、演習をスムーズに実施できるのです。
▼出典:厚生労働省/医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(経営管理編)
▼出典:厚生労働省/医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(システム運用編)
衛星回線インターネットに関する「よくある質問」を紹介。災害拠点病院でなくても衛星回線インターネットは有効です!
新たな仕組みを導入する際には、不明点や懸念材料がつきものです。ここでは、衛星回線インターネットの導入を検討するにあたって役立つ「よくある質問」を紹介します。
衛星電話は設置済みだが、衛星回線インターネットまで必要か?
「災害時における医療体制の充実強化について」の別紙「災害拠点病院指定要件」によると、「災害拠点指定病院は衛星電話を保有し、衛星回線インターネットが利用できる環境を整備すること」と明記されています。また、総務省が提唱している「災害医療・救護活動において確保されるべき非常用通信手段に関するガイドライン」においても、災害時に重要な役割を担う医療機関(災害拠点病院、救命救急センター、大学病院)は、衛星回線インターネットを最高の優先度で確保されるべきものとされています。
衛星電話は屋上や駐車場といった屋外のみでしか通話ができず、不便な印象があるが衛星回線インターネットの使い勝手は?
衛星電話は、事務室内までアンテナ線が引かれていない場合、事務室内での使用はできません。衛星回線インターネットであれば、屋上に機器を設置し、ctcにLAN構築をお任せいただければ院内からのご利用も可能です。
災害拠点病院でなくても、衛星回線インターネットは必要か?
貴院が災害拠点病院でない場合も、患者さまの受け入れや送り出しをする際に災害拠点病院との連携が必要になります。情報共有を行う通信インフラとして、衛星回線インターネットは有効です。
市街地に立地している病院でも衛星回線インターネットは必要なのか
市街地に立地していても、災害時は停電や電柱倒壊で通信の孤島になりかねません。病院職員は災害発生時勤務されることが多く、加えて入院患者さまもいるため、院内には多くの人が滞在することが考えられます。患者さまや職員のご家族との連絡手段としても衛星回線インターネットは有効です。
医療現場の通信インフラを守る衛星回線インターネット「Starlink Business(スターリンクビジネス)」
医療現場の通信インフラを守るために重要な役割を果たす、衛星回線インターネット。しかし実際には、へき地でも通信ができるという利点に注目が集まりながらも、通信速度の遅さなどから、これまでの利用シーンは限定的なものでした。
そこに一石を投じたのが「Starlink」の登場です。「Starlink」は、数千機の低軌道周回衛星によって提供されており、従来の衛星通信サービスに比べて大幅に高速かつ安定した通信環境を実現。従来の静止衛星の約65分の1まで衛星と地球の距離を近づけることにより、大容量で低遅延なインターネット通信を可能にしています。
また「Starlink」が高周波数帯のKuバンドを採用している点も強みに。地上波と周波帯が異なるため、回線が混みにくいという特長があります。
さらにctcのサポートによって「Starlink」を導入することで、より優位性を発揮します。下記にその具体的なメリットを紹介します。
ctcなら、へき地や離島の拠点とWANを構築することが可能です!
へき地や離島での遠隔医療に活用する際、当然のことながら衛星回線インターネットを導入するだけでは、十分にその機能を果たすことはできません。セキュリティの関係上、電子カルテなどの院内システムにアクセスできないケースが多いでしょう。
しかし通信事業者であるctcであれば、院内のネットワークと衛星回線インターネット間でWANを構築することができ、さらなる利便性向上につなげることができます。
ctcなら、病院内のLAN構築を含めて設置をすることが可能です!
衛星回線インターネットを導入する際、ハードルの一つとなるのが、既存ネットワークとの連携です。ctcにお任せいただければ、衛星回線インターネットの敷設から院内のLAN構築まですべて対応が可能。ニーズや細かいご要望に合わせて、最適なネットワーク構築を実現します。
衛星回線インターネット「Starlink Business」のご相談、導入サポートはctcにお任せください!
ctcでは、主に2種類の「Starlink」に関するプランをご用意しております。
一つは事前登録した地点に「Starlink」キットを設置してサービスを利用する「固定設置プラン」です。こちらは、事業活動の維持に有効であり、前述の「災害拠点病院指定要件」や「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」にも対応しているため、医療機関のBCP対応としても非常に有効です。また、クラウドカルテや部門システムの運用、ICTを利用した遠隔診断にも有益なため、山間部や離島などの医療機関でも活用が広がっています。
もう一つは、「移設プラン」です。国内の任意の場所に「Starlink」キットを設置してサービスを利用するプランで、移動体通信エリア外での対応が可能に。訪問診療の通信手段や、通信混雑が予想されるイベントなどにおける緊急連絡手段として有効です。
また、被災地や避難所の通信確保が可能となることから、自然災害への対応策としても導入が進められています。
今後、さまざまなシーンで導入が進み、活躍が期待される「Starlink」。しかし、単にキットを設置するだけでは、その優位性を最大限に活かすことは難しいでしょう。通信事業者であり、ICTに関するサービスをワンストップで担うctcであれば、高品質・高信頼のサービスや関連ソリューションと組み合わせることで、的確にかつ安全な環境下での導入、運用をサポートさせていただくことができます。ぜひお気軽にご相談ください。
▼出典
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版(経営管理編)
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版(システム運用編)