
iPaaSとは?システム連携で実現する業務自動化とデータ統合をわかりやすく解説
この記事のポイント
- 企業内で増え続けるクラウドサービスによるデータ孤立(サイロ化)が業務効率を低下させている
- iPaaSはAPI連携などでさまざまなシステムを統合し、ノーコードで業務を自動化できる
- 500種類以上のサービスと連携可能な「Yoom」で日々の事務作業を自動化
近年、企業のデジタル化が急速に進み、各部門が独自にSaaSなどのクラウドサービスを導入することが当たり前になっています。営業部門ではCRM、経理部門では会計ソフト、人事部門では勤怠管理システムと、それぞれが最適なツールを選択する一方で、新たな課題が浮上しています。それが、データの分散・孤立による「サイロ化」の問題です。
各システムに蓄積されたデータが連携されず、部門間での情報共有が困難になるケースが増加。同じデータを複数のシステムに手作業で入力する非効率な状況も生まれています。従来は、異なるシステム間の連携に手作業による転記やシステム開発による統合が必要でしたが、多大なコストと時間、そして専門知識が求められるため、多くの企業が課題を抱えたままの状態でしょう。
特に「IT人材の不足」や「業務効率化の必要性」に直面する企業では、システム間連携が十分に行えていないケースが多く、データ活用や業務効率化の大きな障壁となっています。この課題を解決するのが、iPaaS(Integration Platform as a Service)です。主にAPIなどを活用して異なるシステムやサービスを内部的に連携させ、データ統合と業務自動化を実現するプラットフォームとして注目を集めています。
本記事では、データ孤立の課題を解決し、業務効率化を実現するためのiPaaSの基本概念や機能、導入メリットについて詳しく解説。また、ノーコードで誰でも簡単に使えるiPaaSサービス「Yoom」の特長や活用方法についても紹介していきます。システム間のデータ連携にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
iPaaSの基本概念とシステム間連携の仕組み
iPaaS(アイパース)は、Integration Platform as a Serviceの略で、異なるアプリケーションやサービスをクラウド上で統合し、情報連携させるためのプラットフォームサービスです。従来の手作業による転記やカスタム開発に代わり、主にAPIなどを活用することで効率的なデータ連携を実現します。
しかし、「業務自動化」と聞くと、多くの方がRPAを思い浮かべるのではないでしょうか。同じく業務効率化をめざすツールでありながら、iPaaSとRPAには明確な違いがあります。また、クラウドサービスにはSaaSやPaaSといった似た名称のものも存在し、これらとiPaaSの関係性も気になるところでしょう。
まずは、これらの違いを整理しながら、iPaaSの位置づけを明確にしていきます。
iPaaSとRPAの違い。APIを活用した連携方法の比較
RPAは、パソコンを使って人が対応していた業務をソフトウェアロボットが代わって行う自動化ツールです。具体的には、メールで受け取ったデータの転記や、Web上のデータの抽出など、PC上のルーティンワークを自動化することができます。
一方、iPaaSはクラウドサービスやシステムを統合するプラットフォームであり、RPAとは機能も用途も大きく異なります。RPAは主に「単一業務の自動化」に適しているのに対し、iPaaSは「複数システム間のデータ連携」「業務フロー全体の最適化」に強みを発揮。RPAが画面上の操作を再現するのに対し、iPaaSは主にAPIを利用してシステム内部でデータ連携を行うため、それぞれ異なるアプローチで自動化を実現します。
これまでRPAは、ある1つの業務において自動化処理を作成することが一般的でした。しかし、近年のAI・機械学習の発達やiPaaSのようなデータ連携ツールの誕生により、業務フロー全体の自動化が可能となっています。このような部門横断的で複数の業務が絡む自動化処理により、企業の業務効率化は新たな段階に入っているといえるでしょう。
RPAとiPaaSを組み合わせることで、それぞれの特性を活かした包括的な自動化環境を構築でき、大幅な業務効率化とコスト削減が期待できます。
iPaaSとほかのクラウドサービス(SaaS・PaaS・IaaS)の位置づけ
クラウドサービスの主要な形態として、SaaS、PaaS、IaaSの3つがあり、それぞれ提供内容と利用目的が異なります。
SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアをクラウド経由で提供するサービスです。Salesforce、Microsoft 365、Slackなどの業務アプリケーションが該当し、多くの企業で日常的に活用されています。PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発のための環境をクラウド経由で提供するサービス。開発ツール、実行環境、データベースなどが提供され、環境構築が不要のためすぐに開発に専念できますが、開発環境の自由度は低いという点があります。
IaaS(Infrastructure as a Service)は、インフラ環境をクラウド経由で提供するサービスで、ハードウェアの購入・管理が不要です。ただし、OSやアプリケーションの整備は自社で行う必要があります。
iPaaSはプラットフォームが提供されるサービスなのでPaaSと似ていますが、目的はSaaSなどのクラウドサービスの統合です。アプリケーション開発などに利用されるPaaSとは用途が異なり、iPaaSは既存のサービスやシステムを連携させるためのプラットフォームとして機能します。企業がクラウドシフトを進める中で、iPaaSはSaaS、PaaS、IaaSなど異なる環境にあるシステム間をつなぐ重要な役割を担い、デジタル変革推進に不可欠な技術となっています。
iPaaSの主な機能と導入メリット。システム連携がもたらす業務効率化

iPaaSの導入により、企業が抱えるデータサイロの課題はどのように解決されるのでしょうか。その答えは、システム間のシームレスな連携と業務フローの自動化にあります。
例えば、CRMシステムで顧客情報を更新すると、関連するほかのシステムにもリアルタイムでデータが反映されたり、SharePoint上への投稿をトリガーにSlackやTeamsへの通知からToDoツールへのタスク登録まで、一連の業務プロセスが自動で実行されたりします。こうした機能により、手作業による転記ミスを防ぎながら、部門間の情報共有をスムーズに行うことが可能になります。
では、iPaaSが企業にもたらす具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
iPaaSがもたらす4つの導入メリット。ノーコード開発からデータ活用まで
1.ノーコード/ローコードによる開発の民主化
多くのiPaaSはノーコードまたはローコードの開発環境を提供し、IT専門知識がなくても業務担当者自身が連携フローを構築できます。パズルのようにドラッグ&ドロップで組み立てるだけで開発が可能になり、業務に精通した現場担当者が直接システム連携を構築できるため、要件の解釈ミスや認識のずれによる手戻りが減少。IT部門への依頼や外部委託なしに、現場主導で業務改善を進められます。
2.クラウドネイティブな即時利用性とスケーラビリティ:
iPaaSはクラウドサービスとして提供されるため、サーバーやインフラの準備なしにすぐに利用を開始可能。セキュリティ対策も提供元が一元管理するため運用負担が軽減されます。ビジネスの成長に合わせて柔軟にスケールアップでき、小規模導入から全社展開まで段階的な拡張が可能でしょう。
3.業務プロセスの最適化と自動化:
複数のシステムをまたぐ業務プロセスを一元的に設計・実行できるため、部門間の連携がスムーズになります。トリガーベースの自動化により、特定のイベント発生をきっかけに処理が自動実行され、人手による監視や操作が不要に。APIによる高速データ通信で、従来のRPAでは困難だった大量データ処理も効率的に実行できます。
4.データの多角的活用と分析基盤の構築:
企業内のさまざまなデータを一元管理することで、部門を越えた包括的な分析が可能になります。データクレンジング機能により表記揺れや重複を自動修正し、データエンリッチメント機能(データの補完・増強)を活用してより価値の高いデータセットを構築。リアルタイムデータの活用により、市場の変化や顧客ニーズに迅速に対応できる経営判断が実現できます。
iPaaSツールの種類と比較。4つのタイプから最適な製品を選ぶポイント
iPaaSと一口にいっても、実は主に4つのタイプに分類され、それぞれが異なる特性を持っています。得意とする領域や適している企業規模、導入難易度なども大きく異なるため、自社の状況やニーズに合わせた適切な選定が成功のカギとなります。
場合によっては、複数のタイプを組み合わせて利用することで、より包括的なシステム統合を実現することも可能です。では、それぞれのタイプの特長と活用シーンを詳しく見ていきましょう。
iPaaSの4つのタイプと特長。用途に応じた最適な選択
1.レシピ型(テンプレート型)
事前に用意されたテンプレートを活用して、簡単にシステム連携を実現できるタイプです。ノーコード/ローコード環境により、プログラミング知識がなくても直感的な操作で連携が可能。マーケティング部門でのツール連携や営業部門でのCRM連携など、比較的シンプルな連携に適しており、中小企業や非技術者が多い環境で特に有効です。
2.ETL/ELT型
データの抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)を行うタイプで、主にデータ分析や集計を目的としています。異なるデータソースから情報を収集し、整形・加工してデータウェアハウスなどに格納。人事部門での従業員データ分析や経理部門での財務データ統合など、データ分析が重要な業務に適しています。
3.EAI型(Enterprise Application Integration)
企業内のさまざまなアプリケーションを統合し、業務プロセス全体を最適化するタイプです。リアルタイムデータ連携とプロトコル変換に強みがあり、IT部門での業務アプリケーション統合や製造部門でのシステム連携などに活用できます。大規模企業での利用が多く、導入には高度な技術スキルが必要です。
4.ESB型(Enterprise Service Bus)
中央のバス(通信路)を介して、異なるシステム間の連携を実現するタイプです。システム同士が中央のバスを通じて疎結合で接続されるため、柔軟なシステム拡張が可能。大企業や組織全体でのシステム統合など、複雑な環境に適していますが、導入には高度な専門知識が必要となります。
iPaaS選定のポイント。自社に最適なタイプを見極める基準
iPaaSの選定では、複数の要素を総合的に検討することが重要です。
企業規模と技術的成熟度が基本的な判断軸となります。中小企業や非技術者が多い環境ではレシピ型、大企業や技術力の高い組織ではEAI型やESB型が適しているでしょう。連携の複雑さも重要な要素で、シンプルな連携ならレシピ型、複雑な業務プロセスならEAI型やESB型を検討します。
データ処理の要件に応じた選択も欠かせません。大量データの処理や分析が目的ならETL/ELT型、リアルタイム連携が重要ならEAI型が適しています。また、導入コストと運用負荷、サポート体制(特に海外製品の日本語対応)、連携可能なサービス数、将来的な拡張性なども慎重に評価すべきポイントです。
自社の規模、技術的成熟度、統合の複雑さ、予算などを総合的に考慮して最適なタイプを選択することが重要であり、場合によっては複数のタイプを組み合わせることで、より効果的なシステム統合を実現できます。
「Yoom」で実現するAPIデータ連携と業務自動化
従来のRPAでは単純な繰り返し作業しか自動化できず、その設定作業も複雑でした。しかし、AI・API・RPA・OCRなどさまざまな技術を組み合わせた次世代の自動化アプローチにより、より高度な業務プロセスの自動化が可能になっています。
iPaaSはこうした包括的な自動化の中核技術として、APIを通じてさまざまなシステムを連携させる重要な役割を担っています。AI技術と組み合わせることで、データの分析や予測、自然言語処理など、従来では困難だった高度な自動化も実現可能に。企業のデジタル変革を加速させ、人間はより創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。
では、こうした次世代の業務自動化を実現するiPaaSサービス「Yoom」の特長と機能を詳しく見ていきましょう。
「Yoom」の特長と機能。500種類以上のサービスと連携可能なiPaaS
Yoomは、ノーコードで誰でも簡単に使える業務自動化ツールです。API・RPA・OCR・AIなど、あらゆるアクションを自動で実行できる機能を備えており、500種類以上のサービスと連携可能。国内外のさまざまなクラウドサービスとノーコードで連携できます。
直感的な操作で誰でも簡単にフローボットを作成でき、自身の業務を自動化することが可能です。Chrome拡張機能を使えば、Salesforce・kintone・Notionなどの普段利用しているツールからフローボットを起動し、日々の業務フローを自動化できます。単一業務だけでなく、人・システム・AIを連携した一連の業務フローすべてを自動化することができるでしょう。
なお、Yoomはクラウドサービス同士をつなぎ合わせた業務自動化に特化しており、オンプレミスからクラウド移行のためのデータ移行ツールとしての使用や、オンプレミスとクラウドサービス間の連携は、Yoomだけでは対応できません。
Yoomの主な機能・ユースケース・連携アプリ
【主な機能】
- アプリと連携:さまざまなシステムとAPIで連携し、システム操作を自動化
- 承認を依頼:任意の承認者へ承認依頼を送信
- データベースを操作:スプレッドシート・kintoneなどに情報の入力や検索を実行
- メールを送信:Gmail、Outlookから自動的にメールを送信
- 書類を発行:雛形をもとにPDF書類を自動作成
- OCRで文字を読み取り:画像・PDFファイルからテキストを自動抽出
- 音声データを文字起こし:音声・動画ファイルから自動で文字起こし
【主なユースケース】
- 社内ヘルプデスクを自動化:社内からの問い合わせ対応をデータベースで一元管理し、普段のヘルプデスク業務をノーコードで自動化
- 社内申請・承認業務を自動化:独自のフォームを作成して、承認フローを設定することで社内申請・承認業務を自動化
- 契約書の作成・送付を自動化:社内の雛形から契約書を自動で作成し、契約締結ツールで自動送信
- SaaSのデータ連携を自動化:繰り返し発生するデータ入力作業を複数のサービス間で自動化
- 書類のOCRを自動化:請求書・名刺・契約書などからテキスト情報を自動で抽出し、データ入力業務を効率化
【主な連携アプリの一例】
- 業務一般:Gmail、Zoom、Microsoft Excel、ChatGPTなど
- チャットツール:Microsoft Teams、Chatwork、Slack、LINE WORKSなど
- 会計・経理:freee会計、Misoca、楽楽明細、勘定奉行クラウドなど
- 営業・顧客管理:Salesforce、kintone、HubSpot、Sansan名刺管理など
- プロジェクト管理:Notion、Trello、Asana、Backlogなど
- ファイル管理:Google Drive、Dropbox、OneDrive、Boxなど
iPaaSで実現するクラウド時代のデータ活用と業務効率化

各部門が独自にクラウドサービスを導入する現代において、データのサイロ化は多くの企業が直面する課題です。iPaaSは、こうした課題を解決する統合プラットフォームとして、主にAPIなどを活用してシステム間の壁を取り払い、効率的なデータ連携を実現します。
重要なのは、自社の状況に最適なiPaaSタイプの選択です。シンプルな連携を求める企業にはレシピ型、データ分析重視ならETL/ELT型、複雑な業務統合にはEAI型やESB型といったように、目的に応じた適切な選定が成功のカギとなります。
Yoomのような500種類以上のサービスと連携可能なツールを活用することで、非エンジニアでも簡単に業務自動化を実現でき、既に20,000社以上の企業がさまざまな分野で効果を実感しています。
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